医療への提言・13
緊急問題(I)
水野 肇
pp.77-80
発行日 1977年7月1日
Published Date 1977/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206288
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早急に策定されねばならぬ医療政策
「医療」には,世界中の国が苦悩している.激増する医療費と,変動する社会への対応策に鬼手妙手がないためである.20世紀の後半,世界中から"社会福祉の星"と仰がれたイギリスは,いまや重症の英国病におそわれ,頻発する医師の"ストライキ"に対して,経済の弱さから打つ手を持たず,一方では国民は重税に泣いている.もうひとつの社会福祉王国であるスウェーデンは,超近代的な病院が林立してはいるものの,総医療費のうち半分が老人医療費で占められ,国民の負担は大きく,中堅サラリーマンでは,収入の50%以上が所得税,年金,保険税,地方税で天引きされて,重税にあえいでいる.
医療の社会化には,健康保険制度などにみられるように,歴史の必然性のような面があることは事実であるが,医療国営の国では,効率の悪さのようなものが前面にでていることは否定できない.イギリスでも,NHS (ナショナル・ヘルス・サービス)は"第二の国鉄"になるだろうとの識者の指摘もあり,四分の一世紀前には"バラ色"であった社会化は,むしろ反省期に入ったという見方もではじめている.ここには医療のすべてを国がまかなうということは,たとえ重税を課してもうまくいかないのではないかという考え方につながりつつある.
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