特集 病院と医師の修練
欧米における教育病院の実態・3
臨床教育病院の利用によるフランスの臨床教育
中嶋 健之
1,2
1東京医科歯科大学
2都立豊島病院第2小児科
pp.37-42
発行日 1968年6月1日
Published Date 1968/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203358
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
同じヨーロッパのなかでも,ドイツではややもすれば基礎医学または医学の論理的な体系化が重んじられてきたのに比較して,フランスでは臨床医学ないし実際的な医学が伝統的に尊重されてきた。フランスにおける医学教育も,この伝統を反映して臨床医学を重視した教育となり,臨床的センスをもった医師の養成を第1の目標としてきた。したがって,臨床実習の場となる教育病院が,医学教育のなかで占める役割には大きなものがあるといえよう。
さて,わが国では各大学医学部がそれぞれの付属病院を有し,そこを主体として臨床教育を行なっている。一方,フランスでは大学の医学部は基礎教室だけをもち,臨床教育のためには,大学とは直接の関係がない公立病院を利用するのが一般の傾向である。したがって,わが国における教育病院の概念をそのままフランスにおけるそれにあてはめると,管理およびスタッフの構成などの点で理解しにくい点が多くでることになる。そこで,ここではまずフランスにおける医学教育制度について簡単に説明し,そのあとで教育病院の実態について述べることにする。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.