- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
フランス共和国は,人口約6300万人,面積は日本の約1.5倍で,パリに首都を置く。日本同様,国内のエネルギー資源は十分ではなく,対外依存率を軽減させるためにエネルギー政策の根幹として原子力開発を精力的に進め,米国に次ぐ原子力発電大国となった。現在,国内の電力の約75%を原子力発電に依存し,19か所の原子力発電所,59基の原子炉を保有している。この背景には,1896年にフランスの物理学者アンリ・ベクレルが放射線を発見して以来,ピエール・キュリー,マリー・キュリーなどによる放射線や原子力の基礎・応用研究の推進,1973年のオイルショックを契機に電気エネルギーを国内でまかなう方向に政策を転換したことがある。放射線防護や被ばく患者の治療等の研究もトップレベルであり,ヨーロッパにおける被ばく医療の中心となっている。
今回,弘前大学大学院保健学研究科「緊急被ばく医療人材育成プロジェクト」における教員研修の一環として,2010年3月末に保健学研究科教員5名がフランスを訪問した。本研修の目的および訪問施設は次の通りであり,有用な情報が得られた。以下,訪問した主な施設について解説していく。
【研修目的】
・緊急被ばく医療体制および被ばく患者の医療・看護・リハビリテーションに関する視察と情報収集
・緊急被ばく医療教育体制の現状と課題に関する情報収集
・過去の被ばく事故例の受け入れに関する情報収集
【主な訪問施設】
・輸血センター(Center de Transfusion Sanguine des Armées ; CTSA)
・パーシー国防軍病院(Hôpital d’Instruction des Armées Percy)
・放射線防護・原子力安全研究所(Institut de Radioprotection et de Sûreté Nucléaire ; IRSN)
・フランス国防省放射線防護センター(Service de Protection Radiologique des Armées ; SPRA)
・キュリー博物館(Musee Curie)
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.