連載 世界病院史探訪・16
ザルツブルクにある2つのシュピタール
石田 純郎
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1医療法人慈生会 介護老人保健施設くつろぎ苑
pp.511-512
発行日 2014年7月1日
Published Date 2014/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102810
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封切りより半世紀になるアメリカ製ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台が,オーストリアのザルツブルクである.この映画を見て,いまだに多くの観光客が世界中から訪れ,ロケ地巡りの大型観光バスが客を満載して,毎日運行されている.断崖のある丘上に,大規模な城砦ホーエンザルツブルクが聳える印象深い地形の人口14万人の古都ザルツブルクは,ザルツァッハ川西部の狭い平野に旧市街がある.この街にも,旧市街に1つ,そのすぐ北側の新市街に1つ,計2つのシュピタールがある.これら以外にもザルツブルクにはシュピタールが置かれ,裕福な都市であった.
世界遺産の旧市街にあるシュピタールが,ブルガー・シュピタール(Burgerspital)で,トラップ・ファミリーが歌った音楽祭会場である大祝祭劇場の北部に接する馬の水飲み場(やはりロケ地)の北部Burgerspitalgasse2番地にある.正式名はBurgerspital St.Blasiusという.まず12世紀末に後にシュピタール教会となったSt.Blasius教会が建てられた.St.Blasiusは病人の守護聖人で,アルメニアの医師で司教であり,5世紀から6世紀初めに実在したとされる.次いで,1327年にFriedrichⅢ世大司教が,年老いた病人のためのシュピタールを建て,16世紀に拡張された.市民からの寄付に頼ったので,Burgerspital(市民病院)と呼び称されるようになった.現在シュピタール棟は,ザルツブルクおもちゃ博物館として利用されている.
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