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■連載を始めるにあたって
平成25(2013)年4月25日病床機能の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会での議論の結果,各都道府県は圏域内の医療機関の機能に関する情報や地域の医療需要の将来推計を活用し,平成27(2015)年度から医療ビジョンの策定を開始することとなった.この地域医療ビジョンについては,策定に当たり都道府県ごとに「協議の場」が設定され,「診療に関する学識経験者の団体」が参加することになっている.具体的には都道府県医師会や大学の研究者などの学識経験者が入ることになると考えられる.
平成27(2015)年度からビジョン策定というスケジュールに沿って検討を進めるためには,平成25(2013)年度中にガイドライン策定に当たって必要となる基礎資料を作成する必要があった.そこで,筆者らは厚生労働科学研究の枠組みでビジョン策定の前提となる将来需要や,現状を投影した場合の医療資源量の推計方法の検討および地域医療ビジョンに投影した場合のイメージを得られるよう,大まかな地域・疾患・医療機能(急性期,亜急性期等)の可視化に関する研究を行ってきた1, 2).平成26(2014)年度以降の研究ではこうした資料をもとに各地域における地域医療ビジョン策定のための具体的なガイドラインの作成作業を行っていくことになる.
ところで,このガイドラインの位置づけについては関係者間での意見の相違も取りざたされている.例えば,医療系ニュースサイトでは厚生労働省の担当者が「ガイドラインには拘束力を持たせる」との考えを述べたことに対し,日本医師会の幹部が「ガイドラインはあくまで参考に過ぎない」と反論したと報道されている3).
医療をめぐる財政状況が厳しくなっていることを受けて,病床機能の調整について現在の案で進まなかった場合,より強い規制が導入される可能性があるという3).社会保障制度改革国民会議の最終報告においても,医療者自らの努力によって医療提供体制の適正化が進む必要性と期待が述べられている4).建前上の言葉遊びに過ぎないという批判をあえて甘受する覚悟で私見を述べると,適正化とは医療ニーズの変化に対応した医療提供体制の適正化であり,必ずしも支出の抑制を意味するものではないだろう.実際,社会保障制度改革国民会議の報告書においても今後の医療費増加についてはそれが許容されている.したがって,喫緊の課題は「適正性」の合理的根拠を示す作業をいかに行っていくかであり,しかもその適正化が地域ニーズの多様性に対応して的確に行われる仕組みをどう具体化するかである.
この作業を関係者の合意のもとで行うためにはデータが必要であり,その準備の一端を筆者らの研究班メンバーが担ってきた.本連載では今回を含めて表に示した6回シリーズで,研究班メンバーの各々がその具体的内容について説明する.なお,医療計画の見直しと地域医療ビジョンは一体的に進むため,本シリーズではこの2つを総合的に議論する.また,地域包括ケアへの対応についても第6回で言及する予定である.
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