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南ドイツ・バイエルン州の人口7万人の古都バンベルク(Bamberg)の旧市街は,世界遺産に指定されている.皇帝ハインリッヒ(Heinrich)Ⅱ世に任命されたバンベルクの司教エベルハルト(Eberhard)は,カトリック・ベネディクト派の聖ミヒャエル修道院を,1015年に市域南西部の小高い丘の上に創設した.1117年までにおきた地震のため全壊した.オットー(Otto)司教により再建されたが,1610年に再び焼失し,教会はネオゴシック風に,修道院はバロック風に再建された.1803年にナポレオンにより還俗され,修道院は廃止され,翌年,聖ミヒャエル・シュピタール(St Michael Spital)に改組された.シュピタール,すなわち救貧院は,ドイツ語圏では病院の起源で,その後,ヴュルツブルクやザルツブルクのように大学病院になったもの,現役の養老院であるものなど,様々である.
印象的なツインタワーの巨大な教会は,取材時には工事のため閉鎖されていたので,内部見学は不可能であったが,天井には580種の薬草と3枚の中世ペストの流行の記憶を表現した人と骸骨のフレスコ画が描かれている.巨大なシュピタール棟は,3,4階建ての堂々とした建築で,教会の西側とそれとは別に,教会に向かい合う形で建てられ,現在も多数の老人を収容している.向かいのシュピタール棟の中央には,1979年以後,ビール博物館(Frankisches Brauerei Museum)が置かれているが,かつてのビール醸造所の跡である.修道院で自給自足の生活をするためと,シュピタールの維持費を捻出するために,12世紀から1969年までの間,実際にこの建物でビールが醸造されていた.ドイツの修道院において,ビール醸造は,市民による醸造に先駆けて行われた.ビールは修道士の栄養源として,また修道院を泊まり歩く巡礼者や修道院が世話する入所者(貧困者,老人,病人)へ提供する飲み物として,欠かせないものであった.
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