連載 職場のメンタルヘルス・15【最終回】
今求められているメンタルヘルス対策
武藤 清栄
1
,
村上 章子
1
1東京メンタルヘルス・アカデミー
pp.536-541
発行日 2008年6月1日
Published Date 2008/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101215
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
病院の現状
政府は,2006年の骨太の方針で述べた歳出歳入に関する改革を変更しないで,何とか国民の医療に対する信頼回復を目指そうとしている.しかし,年金記録問題や後期高齢者医療制度に対する不信感や批判は根強い.特に後期高齢者医療制度に関しては,高齢者だけではなく,家族や地方の医師会からも反対ののろしが上がっている.今や病院のメンタルヘルスの問題は,赤字経営,社会保障費の捻出,診療報酬のあり方,検査や処置についての定額報酬制度,医師や看護師の不足または偏在,勤務医や看護師の過重労働,医療事故,そして医療機関同士の連携など多様な背景から生み出されている.そんな中で,救急医療,災害医療,へき地医療,周産期医療,そして小児医療のあり方は特に深刻である.
図1は,先進主要8か国の租税負担率と社会保障の負担率を示したものである.これを見る限り,先進諸国の中で日本の社会保障(医療,年金,介護,生活保護等)の負担率は少ない方であり,国の政策として医療にもっと力を入れて財源を確保すべきである.図2は,人口1,000人あたりの就業医師数である.先進諸国に比べて日本は,圧倒的に医師の数が少ないことがわかる.したがって,医師の養成や確保が急務となるが,看護師についても同じである.これまでの連載では,目まぐるしい変化の中で,病院のメンタルヘルスの現状がどうなっているのか,いくつか題材を取り上げてきた.今回は最終回として,病院がどのようなメンタルヘルス対策をしていくべきかについて,現状を踏まえながら提言をしたい.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.