連載 働く人と健康―精神科臨床医の立場から・6
職場におけるメンタルヘルス対策
天笠 崇
1,2,3
1代々木病院
2メンタルクリニックみさと
3京都大学医学部大学院社会健康医学系専攻健康情報学
pp.448-452
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101578
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はじめに
筆者は医学生時代,罹患率を減らす取り組みを一次予防,有病率を減らす取り組みを二次予防,再発率や後遺障害を減らす取り組みを三次予防と言う,と習った.疾病や障害をターゲットにするのでなく,健康を増進する取り組みを「ゼロ次予防」と呼ぶことがある.予防レベルの視点から,本連載を整理すれば次のようになろうか.賃金制度を見直すことで労働ストレス要因を改善しうつ状態やうつ病を予防し得ることが示唆されたこと1),ワーキングプアの解消によってうつ病を予防し得ることが示唆されたことについて2)述べたが,これらは一部ゼロ次を横目で睨みながら主に一次予防対策の視点,労働ストレス要因の1つであるハラスメントとうつ病や自殺3),労働関連自殺の予防と遺家族の救済4)について述べた回は一次予防対策の視点,リワークの成功要因について述べた回5)は三次予防対策の視点から述べた,とでもまとめられる.職域におけるメンタルヘルス対策を展開する際,これらゼロから三次予防を視野に入れた包括的な取り組みが求められる.
本稿では,職場におけるメンタルヘルス対策の現状ならびに焦眉の課題である一次予防対策を中心に述べる.同時に,本連載で取り上げることの少なかった二次予防対策の手がかりについても少しだけ触れる.
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