特集 変容する患者像―求められるヘルスリテラシー
巻頭言
大道 久
1
1日本大学医学部医療管理学分野
pp.389
発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101180
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患者・家族の医療へのかかわり方が大きく変わりつつあることが強く認識されている.昨今,病気は治って当たり前で,治らないのは病院や医者が悪いからと言わんばかりの患者・家族の態度に辟易している医療人は少なくない.済んだ医療に納得したかに見えて,突然に代理人を引き連れて診療録の保全手続きに及ぶ事例が経験されたり,故なきクレーマーに苦慮することも日常的になりつつある.未集金の増大も,経済格差の拡大に帰するだけでは説明がつかない状況といえる.
このように変容しつつある患者・家族の背景には何が起こっているのか.医療だけでなく教育や福祉にも共通する状況が出現しているが,世代交代が進行して価値観が多様化し,家族や地域の変質,あるいは形骸化も指摘されてきたところである.急速な社会環境の変化と氾濫する情報のなかで,医療の受け方と提供のされ方の間でミスマッチが拡大し,新たな調整による秩序が求められているといえる.この問題の改善に向けて期待されているのが,ヘルスリテラシーの向上である.
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