特集 今後の医師養成と病院
巻頭言
大道 久
1
1日本大学医学部医療管理学
pp.993
発行日 2009年12月1日
Published Date 2009/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101587
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平成16年に導入された新医師臨床研修制度が,早くも大幅に見直された.新制度の運用に伴う齟齬を修正するための見直しというよりは,長く医師養成の拠点となってきた大学病院の急速な脆弱化がもたらした地域医療の破綻状況を,少しでも立て直そうとする意図が色濃い.今回の見直しの最大の眼目の1つは研修プログラムの弾力化であり,内科・救急・地域医療を「必修科目」,外科・麻酔科等の5科のうちから選択された2科を「選択必修科目」とし,2年目のほぼ1年間,将来専門とする診療科での研修を可能としている.
さらに臨床研修病院の指定基準も見直され,研修の質を向上させるためとして,救急医療の提供,年間入院患者数3,000人以上,研修医5人に対して1人以上の指導医の配置など,研修病院にとってはハードルが引き上げられたと言える.また,研修医の地域的な偏在を是正するために,当該県の人口規模や県下の医学部入学定員割合に,面積当たりの医師数や離島人口を勘案する調整算定式を導入して,各都道府県の研修医募集定員の上限設定を行った.医師としての人格の涵養と基本的な診療能力の習得という当初の基本理念は変わらないとされるものの,わずか運用5年で初期臨床研修の路線を転換せざるを得なかったのは,長年にわたって医師養成数を抑制してきた結果であり,臨床研修と医師不足とは別の問題とする批判も根強い.
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