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ヘルスリテラシーの位置付け
高度に情報化が進み,様々な媒体によって膨大な情報が提供されている現代において,リテラシーの重要性があらためて注目されている.リテラシーは,「個人が(言語を)読み,書き,話す能力と,目標の達成や,知識やポテンシャルを培うために仕事や社会で必要となる程度の問題を処理し,解決する能力」1)とされる.つまり個人が社会生活上必要な知識や能力を獲得し,さらにそれを拡大する際の基盤であり,識字能力や読解能力を中心とした能力,コミュニケーション能力,さらに現代ではコンピュータの利活用能力まで含めて捉えられている2).このように広義に捉えた場合のリテラシーの概念は様々な領域で適用されていて,情報リテラシー3)や科学リテラシー4)などのように,多様なリテラシーに関する議論がなされており,医療や健康の領域も例外ではない.
1974年にカナダのラロンド保健大臣による報告書5)が発表され,人々の健康状態に影響を与える社会的要因への関心が高まる中で,教育も健康増進上の1つの要素として認識されるようになった.1986年のオタワ憲章6)によるヘルスプロモーションの提唱後は,個人のエンパワメント達成におけるリテラシーの重要性が指摘されるようになり,1990年代に入ると,各国の健康増進政策やヘルスプロモーション戦略に,教育やリテラシーの向上が具体的に位置付けられるようになった.例えばアメリカのHealthy People 2010においてヘルスリテラシーは「個人が,適切な健康上の判断を下すために必要な,基礎的な健康情報とサービスを獲得,処理し,理解する能力の度合い」7)として定義され,ヘルスリテラシーへの配慮がヘルスコミュニケーション領域の目標達成において必要であることが示された8).その他にも,オーストラリア9)やイギリス10)でも同様に,ヘルスリテラシーへの対応が健康増進政策に組み込まれている11).このように,健康増進政策を円滑に進めるに当たって,教育を受ける機会を逸しやすい移民や低所得者におけるヘルスリテラシー向上は,諸外国において重要な社会的問題とみなされている.
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