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Ⅰ.初めに
Duchenne型進行性筋ジストロフィー症患者(以下DMDと略)のリハビリテーションの目的は,筋の廃用や変形の増悪を防ぎ,残存筋を可能な限り利用して,少しでも自立した生活が送れるように援助することである1).そしてVignosは,可能な限り独立歩行を維持させることを,その目的の一番目に挙げている2).DMDでは歩行不能となった時期より,急速に体幹や四肢の変形や拘縮が進行することが報告されている3).本症では歩行不能となることは不可逆性のものであり,悪化の一途をたどることになる.このため患児の歩行可能な期間を延長することはきわめて重要である.
DMDでは筋力が低下して,関節の拘縮が進行すると,より安定した立位姿勢を保つために,前方に重心を移動させていることが解明されている4,5).したがって,足・膝・股の各関節(以下,下肢関節と略)の拘縮は立位バランスの不安定を招き,自立歩行の大きな阻害因子となる.このような理由で,下肢関節の可動域訓練は理学療法の中で重要な位置を占めている.その一つの方法として起立台の使用がある.我々はこれまでこの方法でDMD患者の下肢関節可動域訓練を行い,その直後に歩行スピードの改善や歩行距離の延長がみられることを経験している.起立台使用直後は拘縮している下肢関節の可動域が一時的に改善するが,これがどのような理由で歩行能力に効果をもたらすかの報告は無い.今回我々は,この点に関し以下の仮説を立て,これらを確かめる目的で本研究を行った.
(1)重心点がより支持面の中央に移動し安定性が増加する.
(2)尖足の軽減で,下腿三頭筋が伸長され生体長に近づくことにより,歩行時の推進力が増大する.
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