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はじめに
デュシャンヌ型筋ジストロフィー症(DMD)は最も頻度の高い代表的な筋疾患である.3歳前後に発症に気付き6歳頃までに診断をうけている.最近は血清CK値の検査でより早期に診断されることが多くなった.10歳前後で歩行不能になり20歳前後で生涯を終ることになる.
全国的な統計からみた死亡年齢は平均18.9±3.6歳(11~27歳)である1).最近は20歳代後半まで延命するものが増えている.この寿命の延びは初期からのリハビリテーションの実施とくに筋ジストロフィー施設の療育に負うところが大きい.一般に子供としての時期を幼児(就学前)児童(小学)生徒(中学,高校)と就学を基準に区分することができる.そしてDMDの進行性障害の過程からは自然歴の初期から歩行不能を経て末期にかかるまでの10数年の経過が該当することになる.この障害の進展には個人差があり早いもの遅いものがあるが一般に障害度8段階分類からみるとステージ6,7までに属することになる(表1).ここでは子供の特徴的リハビリを述べるため主として就学期,ステージ1から6に至る中期おわりまでをとりあげることにする.
DMDの原因は不明で遺伝的背景(性染色体劣性)をもった筋原性筋萎縮症であり根本的治療はない.現在治験中の薬剤もあるがいまだ的確な効果はない.病因的には遺伝学的研究がすすめられている.従って障害に対する治療手段はPT,OTを中心とした機能訓練によって残存機能の合理的なしかも代償能を含めた最大限の維持を目標にし,自活能をうながしていく以外にない.
リハビリとしては幼児期にはじまり,その後の発育の過程における身体的機能障害に対する医療,人間形成の基礎づくりの教育,社会生活への支援など大きくは3つの基本的アプローチがある.このうちには栄養,心理,看護,生活指導などの分野もかかわり多面的な取組みが必要で,これら職種のチームワークの上に成り立つリハビリといえる.なお,在宅(通院),施設(入院)での療護,普通学校,特殊学級,養護学校,訪問指導での教育といった場の違いがある.これら生活様式の違いは障害に対しても影響すると思われる.また,リハビリのアプローチにおいても推進的あるいは制約的問題が考えられる.
昭和39年以来,筋ジストロフィー専門病床2,500床が国立療養所27カ所に開設され,DMD1,030人が入院治療をうけている(59年11月,PMD入院1,609人中).在宅児の地域リハビリはこれら施設あるいは一部大学病院などが中心となってすすめられている.また,治療研究も厚生省研究班によって推進されてきた.DMD初期には在宅でのリハビリであるが障害がすすむと施設入院が多くなる.この入院時の最頻値は9歳である.近時デイケア,短期入院でのリハビリも普及しつつある.このような実状をふまえ子供のDMDのリハビリのあり方を述べる.
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