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はじめに
リハビリテーションについての理念の深まりやニードの高まりの中で,作業療法(Occupational Therapy以下OT)の役割も,身体的側面のみならず心理・社会的側面から,患者の生活諸機能全般にわたる理解と援助へと拡大して来た.
しかし,従来OTで用いられて来た評価法は,関節可動域や筋力,上肢機能や日常生活動作等々,主に患者の身体機能的側面からの把握を目的としており,それらの結果から患者の全体的な生活上の問題点を明らかにすることには無理があった.
またOT実施による総合的な効果に関して,千田1)や大西2),そして井上3)らは,面接やアンケート調査によるその結果を報告しているが,一定の指標を用いての分析ではない.
このような問題意識から,我々はGranger4)によるESCROW機能スケールに着目し,そのOT評価への有効性な検討すべく本研究を計画した.
原著のおさめられている「Krusen's Handbook of Physical Medicine and Rehabilitation:3rd ed」5)は,その第2版が,邦訳「リハビリテーション体系」の名でわが国でも高い評価を受けており,本スケールは,在宅障害者の評価法の1つとして,概略的に対象者の心理・社会的問題を整理したり,OTによる変化を総合的に判定する際の指標として役に立つと思われた.
原著者のGrangerらは,1970年代から,病院や老人ホームなどの施設,地域,と言った幅広い領域で,リハビリテーション・ニードとその成果の客観化について数多くの研究6-10)を発表している.
ESCROWは,その名のとおり,6つの項目について在宅障害者の機能を整理し,各々4段階のスケールで判定される.6項目とは,E:環境(Environment),S:社会的関係(Social Interaction),C:家族(Cluster of Family Members),R:経済力(Resources),O:精神的自立性(Outlook),W:仕事(Work)・学校(School)・退職後の状態(Retirement Status)であり,今日リハビリテーションの分野でもその重要性が叫ばれているQOLのカテゴリー11)を,ほぼ満たしている.
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