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はじめに
小児看護においては,言語能力や認知能力などが未熟なため,そのニードが充足されているか否か確かめることは困難であり,小児看護ならではの技術,技能が要求される。6歳は発達段階では児童期にあたり,エリクソンの発達課題は勤勉性対劣等感である。この時期は,学校教育を受けるようになり,児童は知的能力の発達によって,学校において,自由にいろいろな活動や学習に取り組めるようになる。幼児期よりも身体機能が充実し,感覚・運動機能は発達する。情緒・知的機能は,幼児的な自己中心性や情緒機能を残す。
このような段階の子どもが痛みを抱えるということは,苦痛で心身を消耗させ,小児の日常生活行動や成長・発達を妨げる要因のひとつである。筒井は「看護者は子どもの看護には児童の権利に関する条約への理解が重要になる。とくに第3条の児童の最善の利益,第24条の到達可能な最高水準の健康を亨受すること並びに病気の治療および回復のための便宜を与えられることなどは,子どもの看護をする看護者にとって理解しなければならない重要な条文である」1)と述べている。このことからも,子どもの最善の利益が守られるよう,痛みを理解しできる限り痛みを最小限に抑え,安全・安楽な療養生活が送れるように看護者が援助することが大切である。
今回,頸部リンパ節炎と診断された6歳の女児,A氏(以降,Aちゃん)を受け持たせていただいた。症状は頸部の腫脹と疼痛があり,日常生活時やコミュニケーション時も疼痛緩和のために,首を曲げて自分で疼痛の少ない体位をとっていた。看護していくうえで,疼痛の有無や疼痛の程度を知ることが重要であった。しかし,疼痛の程度については,表現してくれなかった。疼痛の程度を表現できないことは治療にも影響する恐れがあると考えられた。今回,そんなAちゃんとのコミュニケーションにおいて,フェイススケール2)を使用することで疼痛の程度の表出がみられたので,ここにその過程を報告する。
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