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はじめに
進行性筋ジストロフィー症(以下PMDと略す)とは,筋原性・遺伝性・進行性の筋力低下を示す疾患である1).中でも,今回述べるDuchenne型は,原因不明で治療法もなく予後不良と,非常に重篤な疾患である.小学校入学頃から動揺性歩行が出現し始め,9歳頃歩行困難となり,やがて坐位を保持することも不可能となって,最終的にはbed patientとなる.直接の死因は,呼吸不全・心不全であり1),平均18歳で死亡するが,最近では,一般的管理の進歩により25歳以上長生きする患者も増えてきた.
PMDの歴史は古く,記録上からは,古代エジプトのピラミッドの壁画にすでに残されている2).しかし,それに比較して,施設入所中のPMD患者に対する我が国の作業療法は10年と,他の疾患に対するものと比べても,その歴史は大変浅い.また,携わる作業療法士も20人に満たず,一人一人が試行錯誤を繰り返しながら,模索している状態である.学院で学んだ知識を総動員して,頼りない中で,筆者らも作業療法を10年実施して来た.その経験の中で,Duchenne型患者に対する作業療法は,残された機能を有効に使用して,ADLを維持することと,人生を有意義に過ごすための援助を行うことに重点を置いてきた.それは,患者の人生が,長くなったと言っても25年そこそこであり,一般的な男性の平均寿命約74歳からみても,1/3程度であること,治療効果のはっきりしない積極的機能訓練をいつまでも実施することは,患者の人生の無駄使いになるのではないかと思われることなどからである.今回は,ADLとクオリティ・オブ・ライフ(以下QOLと略す)に焦点をあて,施設内の車椅子生活を送っているDuchenne型の患者に対する作業療法について述べる.
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