特集 終末ケアにおける理学療法・作業療法
<随想>
終末ケアの経験から
冨岡 詔子
1
1信州大学医療技術短期大学部
pp.531
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103613
- 有料閲覧
- 文献概要
この原稿を頼まれたときは,昨年の11月.その直前に,OTを実施していた骨肉腫の青年と白血病の少女の死に出会った.OTにとっては,医者や看護婦と違って,担当患者の死は極めて非日常的な出来事である.情緒的に巻き込まれていたせいもあって,短期間に死が続いたことで,暫く落ち込んだ.いわゆるターミナルケアと呼ばれている領域に片足を踏み込んでしまったことを後悔した.これからも続けていくつもりかと,自問自答する日が何日も続いたが,結論は出せなかった.
その後,今年の3月に父を見送り,4月には自宅療養していた親類の末期癌の最期のみとりを手伝った.ホッと一息入れる間も無く,同僚の母親あるいは父親の葬儀に出席し,喪服をしまっては出しの日が続いた.その度に人間の死や生について考えさせられ,それと反比例して原稿の筆がすすまなくなった.それでもと,気をとりなおして原稿用紙に向かっている時に,OT学生のバイクに因る事故死の知せが飛込んできた.気も動転して,身元確認に行き,パニックになりながらもその後の対応に走り回り,一段落したときは,自分が生きているのが,不思議に思えてきた.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.