特集 終末ケアにおける理学療法・作業療法
<随想>
終末ケアの経験から
笠原 良雄
1
1東京都立神経病院
pp.527
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103609
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当院は,神経系難病の診療を主な目的として設立されたが,リハビリテーション科理学療法部門においても,進行性,難治性の神経疾患患者が占める割台は大きい.今回は,数ある進行性疾患のなかでも,特に進行が急速でしかも終末ケアが重要である筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリハビリテーションを通じて思うところを中心に述べてみたい.
ALSは,随意運動に関与する第一次および第二次の運動ニューロンが比較的選択的に障害される変性疾患で,手指や下肢筋の脱力,筋萎縮からはじまり,やがて全身の筋力低下によりADL全介助となってしまう.球麻痺による嚥下障害,発語障害,呼吸障害も加わりレスピレーターが使用されることが多い.知覚障害,眼筋麻痺,膀胱直腸障害は,一般に起こらないとされている.経過は,常に進行性で予後不良,多くは数年以内とされている.終末期に至ると,気管切開,レスピレーター装着により会話がほとんどできず,まばたきによるイエス,ノーサイン,文字盤,タイパーマトリックス等により意志伝達を行っているが,たいていの場合,意識や精神機能には問題ないので,意志伝達がスムーズにいかないことが,非常に苦痛のようである.また,随意運動がしだいに限られていくため,それぞれの患者や時期にあって,残された機能を最大限に利用できる適切なナースコールが必要となってくる.
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