特集 終末ケアにおける理学療法・作業療法
<随想>
終末ケアの経験から―筋ジストロフィー症患児・者に接して感じたこと
風間 忠道
1
,
岩渕 智恵子
1
1国立療養所東埼玉病院
pp.530
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103612
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私達の勤務する病院は,筋ジストロフィー症患児・者の収容施設である.Duchenne型が大半を占めている.5歳前後に転倒しやすくなり,小学校入学時より歩行困難が著明となる.9歳頃歩行不能,平均19歳で死亡退院となる.つまり,筋ジストロフィー症患児・者に対して,作業療法を実施していれば,当然末期にも関わることになる.当院では,動脈血炭酸ガス分圧が60mmHg以上の呼吸不全末期の者を,終末ケアの対象としている.
この時期の患者の病室の前を通ると,「胸を押してください」という声が頻繁に聞こえるようになる.自力で呼吸することが,とても困難になってくるからだ.また,「先生,僕のそばにおいでよ.僕のそばにいるときっと幸せになれるよ.」「僕のご飯あげるよ.よかったら,おやつもあげる.」などと話しかけられたりしたこともあった.息も絶え絶えに言うその言葉の中に,とても大きな悲しさ,寂しさを感ぜずにはいられなかった.
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