The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 18, Issue 10
(October 1984)
Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
昭和54年4月から,養護学校教育が義務化され,漸く障害児(肢体不自由に限定しておく)は就学の機会を確保することができた.
これを「入口」にして,社会参加,自立生活への第一歩を踏みだす障害児が出始めた.
しかし,卒業という「出口」に向かう障害児は,将来の生活についての関心や期待をつのらせる一方で,「出口」の向う側には一体どんな世界が自分達を待ち受ているのか,いつしか未知のものへの不安とおそれをも深めている.
とりわけ,<できる仕事があるのか,雇ってもらえるのか><学校へゆきたいが,受入れてもらえるか><利用できる施設はあるのか.いつでも入所できるのだろうか.><治療・訓練を続けるべきか.やはり在宅生活を考えておくべきだろうか.その時,どうして過ごせばよいのか.生活保障されるのだろうか>等,具体的な問題が次々と出てきても,どれから手をつけ,どう処理したらよいか,全く五里霧中になっている様子が窺える.
しかも,障害が重度化,多様化し,知恵遅れ等が重複する,いわゆる重症心身障害1,2)(図1)が障害児の<常態>になってきているため,その進路問題について,障害児の家族やリハビリテーション関係者らは,大きな危惧を抱きはじめた.その結果,障害児の進路は,結局のところ在宅ケアを中心にした狭く限られた生活しかないのではないかという懸念が生じ,強まってきているのが実情である.
たしかに変動がめまぐるしい今日のような社会状況が続けば,障害児の進路問題は今後ますます難しい局面を迎え,厳しい選択を迫られ,障害児もその家族も確実に窮地に追いこまれることになると思われる.だからといって簡単に,障害児の将来を,在宅生活に限る見方は,あまりにも短絡的で,何の展望も発展性もないものといえよう.
いかに障害の<重度化・重症化>が進んでも,障害児に多様な進路選択を保障するにはどうすればよいのか,問い続けたければならないのではないだろうか.
あらゆる障害児・者の「社会参加・平等」を実現し,リハビリテーションの発展をもたらすためにも,障害児の進路問題は,まず第一に取り組まれ,解決の方向を見い出す努力が払われるべき課題であると考える.
本稿では.障害児を送りだす側(家族・学校等,以下送る側)と,それを受入れる側(施設・職場等,以下受入れ側)(図2)との関係を軸に,受入れ側が障害児をどのように見ているか,教育の場で行われる進路指導に何を期待するかについて,考察し,意見を述べていきたい.
なお以下に使用する資料等は,すべて兵庫県身体障害者更生相談所(以下相談所)において実施した,肢体不自由児を対象とする「進路相談」の結果に基づいていることを,あらかじめお断りしておく.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.