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講座
痛みの生理学 3.内因性疼痛抑制機構
Physiology of Pain. 3. Endogenous Pain Inhibitory Mechanism
武重 千冬
1
Chifuyu TAKESHIGE
1
1昭和大学医学部第一生理学教室
1Department of Physiology School of Medicine, Showa University.
pp.189-194
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102814
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Ⅰ.内因性疼痛抑制機構の概略とその分類
一般に感覚系には,過度の刺激が加わると,これを制御する機構が備わっている.この制御機構には,感覚受容器の前に位置する附属器官を調節して刺激量を制御する入力制御(input control)と,感覚情報が感覚受容器を経て中枢へ伝達される途中のシナプスで抑制をかける入門制御(gate control)とがある.前者には視覚の対光反射や,聴覚の鼓膜反射などがある.後者の例としてよく知られているのは,聴覚における入門制御で,ネコの眼前にネズミを往来させると,クリック音に反応するネコの蝸牛神経節の反応が抑制される現象である.これは視覚からの情報が,脳幹網樣体を介して下行性に働き,聴覚の求心性情報が感覚受容器から最初のシナプスに伝わるのが抑制され,上位中枢に聴覚の情報が伝達されない現象である.
このような入門制御は痛覚にも存在する.例えば戦場やスポーツの試合中での傷害による痛みが時として感じられないのはこの下行性抑制が働くためと考えられている.また腹をさすることによって腹痛が和らぐかもこの入門制御機構による.
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