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特集 シンポジウム「専門職としての倫理」
守秘義務―身体障害者の場合
Duty to Keep Client's Secret-For Physically Disabled Clients
福屋 靖子
1
Yasuko FUKUYA
1
1筑波大学社会医学系
1Institute of Community Medicine, The University of Tsukuba.
pp.169-173
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102811
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Ⅰ.はじめに
病気というのは,本人および家族にとって重大な意味を持っている.というのは,病気は生死に関わる問題だからである.通常人間は,その生命を維持するためにはすべてのものを投げうってでも第一に行おうとするものである.したがって,医療に携わる職業人は,苦悩している人間の姿に常に直画していることになる.苦境にある人間がその状態をさらけ出し救いを求めるのが患者の姿である.
医療者と患者の良い人間関係が成り立つためには,お互いに信頼関係がなければならない.人間と人間の信頼関係が成り立つためには,相手の人格と自由を尊重することが不可欠であるが,患者と医療者の関係においても同様で,患者の人格と個人的自由とに敬意を払うということから秘密保持の必要性が生じてくる.
これから障害を持ったままで生きていかなければならない人を援助する職業人にとっては,病気そのものは治癒していたり,あるいは慢性期にはいっていて常に生死の際にあるとは限らない人をその対象とすることが多いが,その人の人生にとって最も重大な問題に直面していることには変りがない.キューブラロス1)は,“一生治癒しない障害を持ったままで生きていかなければならないと思うことは,時には,死の受容よりも苦悩は大きい”と述べている.
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