医療従事者のための医療倫理学入門
4.医療現場におけるプライバシーと守秘義務—守秘の範囲について
浅井 篤
1
,
大西 基喜
2
,
永田 志津子
2
,
新保 卓郎
2
,
福井 次矢
2
1京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻
2京都大学医学部附属病院総合診療部
pp.332-334
発行日 2000年4月1日
Published Date 2000/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902974
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〔ケース〕
ある病院で将来のカルテ制度を検討するための話し合いが持たれた.この病院では長年,各科1カルテ制を取っており,患者が受診している診療科の数のカルテが作られていた.
このような状況下で,ある診療科長が1患者1カルテ制の導入を提案した.患者をひとりの個人として全人的医療を行い,かつ,効率よく医療情報を収集,把握するためには必須であるという主張である.これに対してある科の医師は,「1患者1カルテ制を導入すると,患者のプライバシーが侵害される.患者は主治医にのみ個人的な情報を提供している.一つのカルテになったら他の科の医師もそれを見ることになる.特に中絶歴など主治医以外に知られたくない秘密が,多くの医師たちの目に触れることになる.これでは守秘義務が守れない」と述べ,従来の各科1カルテ制を擁護した.
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