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はじめに
個人情報の保護に関する法律(以下,「個人情報保護法」という)が平成15(2003)年に制定されて以降,医療機関の取り扱う患者情報についての国民の意識も非常に高まっている.
個人情報保護法において,「個人情報」とは,生存する個人に関する情報であって,①当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの,あるいは②個人識別符号が含まれるものをいうと定義される(個人情報保護法第2条第1項第1号・第2号).さらに,他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものも,個人情報に該当する(同条第1項第1号括弧書).仮に患者情報の氏名や生年月日を抹消したとしても,その他の情報と診療記録とを照合することによって特定の個人を識別することができるのであれば,個人情報となる.
病歴は「要配慮個人情報」として,その取り扱いにおいて特別な配慮が求められる(個人情報保護法第2条第3項).同法は,直接には事業者である医療機関を対象としたものであるが,医療従事者としても個人情報保護法の理解に努めることが大切である.
そもそも,患者の秘密を守ることは医療従事者と患者との信頼の基礎になることから,医療倫理上の義務でもある.加えて,臨床検査技師等に関する法律(以下,「臨床検査技師法」という)では,「臨床検査技師は,正当な理由がなく,その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない.臨床検査技師でなくなった後においても,同様とする」と規定し(臨床検査技師法第19条),違反した場合には50万円以下の罰金刑が科される(同法第23条)おそれがあり,検査業務に関する犯罪または不正として行政処分の対象ともなりうる(同法第8条,第4条第3号).
連載第4回では,夫への患者情報漏洩を原因として,看護師と夫,また勤務先医療機関の管理者に対して民事上の損害賠償責任が追及された事案〔(原審)平成24年1月17日大分地方裁判所判決1)/(控訴審)平成24年7月12日福岡高等裁判所判決2)〕を紹介する〔請求額約330万円/原審:医療機関に対する請求棄却・控訴審:一部認容(110万円).看護師とその夫を被告とする訴訟は原審において和解により終了〕.
なお,個人情報保護法第27条第1項は医療従事者の守秘義務を免れる“正当な理由”を検討する際の参考ともなる.個人情報保護委員会のホームページ3)において,個人情報保護法ガイドラインや関連分野ガイダンスなどが公表されているので,この機会にあらためて確認することをお勧めする.
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