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はじめに
たしか1970年頃だったと思う.国立療養所東京病院付属リハビリテーション学院に勤務していた頃,当時WHOのコンサルタントとして赴任していたJanet平田OTRが,WFOT(World Federation of Occupational Therapists)の認可校としての承認がもらえそうだと喜こんでいたことがあった.ところがWFOTの教育委員会からの依頼を受けた英国の〇〇女史が清瀬の国立療養所東京病院付属リハビリ学院を視察に来日したとき(おそらく他の所用も兼ねた来日だったと思うが),たまたま教育方針をめぐる紛争が続いていた.女史のレポートに基づいた教育委員会の結論は,「プログラムの実施か円滑に行われるまでは,暫定的承認である」というものであった.この時の平田女史の残念そうな表情が今でも印象に残っている.
1972年にWFOTの正会員として,日本作業療法士協会の加盟が認められるまでは,WFOTの定めた基準に合致するOT校であるか否かの認可は,直接WFOTか行っていた.もちろん,申請のあった非加盟国のOT校に対して行うのであるが,リハビリテーション学院の卒業生に海外での卒後研修の道を開くためには,WFOT認可校としての承認を是非とも必要としていたのであった.また,日本作業療法士協会が正会員としてWFOTに加盟できるか否かの条件ひとつに,「WFOTの基準に合ったOT教育を受けた12名以上の作業療法士により構成されていること」という一項があり,国立療養所東京病院付属リハビリ学院と九州リハビリ大学校のOT科はWFOT認可校としての承認を急務としていたのであった.
清瀬と九州にできた日本で最初のOT校が,WFOTの認可を得ることを重視した背景は,OTの数も増え,OT校が次々と設立されている現在では,もはや過去の物語りかもしれない.しかし,OTの世界でも外国との交流が身近なものとなっており,世をあげての国際化の時代に,作業療法士の国際的な専門職団体であるWFOTが,OT教育に対してどのようにとり組んでいるかを知ることは,各自のOT観や職業倫理,専門職団体のもつ機能,さらに専門職とは何かを国際的な視野で点検してみるきっかけになるかもしれない.
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