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Ⅰ.はじめに
脳性麻痺の原因は,主として胎生期や周産期にあると考えられている.症状は非進行性と考えられていたが,乳児期,幼児期と身体機能の発達,成長に伴い,一面では機能の獲得があり,他面発育のアンバランスや筋トーヌス異常の増悪などで二次的なさまざまな問題が生じて来る.成長が停止した成人期は,人体の細胞レベルの構造は脱落や萎縮を始め,持久性や瞬発力の低下など,徐徐に老化期に移行して行く.これらの変化は運動機能だけでなく,精神面の活動性も徐々に低下している.
図1に人間成長とリハビリテーションを始め各関連のある科名を記載したが,人間の成長を促すためには,初期の幼児期に十分なリハビリテーションを施行し,子供の発達に沿って療育の量を調節して行き,再び老年期に達すると,現機能維持のため積極的リハビリテーションの必要性を図示した.研究者によっては,学童期以降はリハビリテーションの関与は不用との見解もあったが,人間生活の流れを知る者には無謀な意見と受取っている.
機能低下は年齢に関係なく出現する場合もあるが,多くは基本的成長が一段落する20歳前後より目立って来る.
国療下志津病院重心棟には118名の障害児者が収容されている.診断名は約70%が脳性麻痺とされているが,小頭症や多発奇型なども混在している.入所時は18歳以下であったこれらの患者も,すでに入所10年余を過ぎた音が1/2に達している.入所当初の運動機能に比べ,現在著明な低下を来した例は全体の90%におよび,主として関節変形,拘縮,脱臼や脊柱変形に伴う移動能力の低下,坐位バランス困難などがみられる.従来一部の患児にのみマッサージ師の関与があったので,機能の維持が困難であったと推定される.
今回のテーマ,二次的障害は,脳障害により誘発されるさまざまな問題が含まれる.始めに内臓器の中で生活に直結している消化器系と呼吸器系への影響を考えてみる.
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