特集 老人
<資料>老人保健法(案)について
古市 圭治
1
1厚生省社会局老人保健課
pp.111-113
発行日 1982年2月15日
Published Date 1982/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102576
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はじめに
豊かな老後の生活を送るために,心身の健康を保持していくことは不可欠の条件であり,高齢者の関心事の第一位に常に健康問題があげられるのも当然のことであろう.
高齢者に対する保健医療の諸施策は「老人福祉法」に基づいて昭和38年から老人健康診査が行われ,さらに昭和48年1月から70歳以上の老人を対象に,同年10月からは65歳以上の寝たきり老人なども含めて老人医療費支給制度が発足して次第に整備されてきた.現行の老人医療費支給制度の趣旨は,有病率が高いにもかかわらず経済的な負担から受療をはばまれていた老人の受療を容易にし,早期受診により健康の保持を図ることであった.
制度の発足に伴って高齢者の受療率は著明に増加し,厚生省の国民健康調査・患者調査などの統計数値からみても,有病率に見合った受診が確保されており,現在では医療を必要とする老人はほとんど医療機関の管理下にあることがうかがえる.受療率の向上が老人の健康に及ぼした効果について厳密な評価を行うことは困難であるが,わが国の高齢者の平均余命は着実に延長しており,しかも制度実施後における延長率の高いことは注目に値する.
このように本制度は今日までその趣旨に沿った成果をあげてきており,老人が必要とする医療を安心して受けられるようになった点については広く評価をうけているところである.従って今後の問題は平均余命の延長が果たして老人の幸福に,さらには健康そのものにつながっているかということ,また急速に進行する人口の老齢化に伴って増大する医療費にどのように対処していくかということであろう.
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