The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 15, Issue 10
(October 1981)
Japanese
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はじめに
1817年,James Parkinsonは振戦・筋硬直・寡動・姿勢反射へ消失を認める症例を初めて記載し以後このような症例は,パーキンソン症候群(パーキンソニズム)と呼ばれている.その病理学的背景がかなり明らかにされた今日,上記諸症状が初老期前後に発現してきた場合,パーキンソン氏病もしくは振戦麻痺と診断することは比較的容易である.またそれらの症例では,L-dopa製剤が有効であり,かつ神経病理学的には黒質の変性が証明される.例外としては各種薬物中毒・一酸化炭素中毒・マンガン中毒の症例が寡動や筋硬直を主徴とすることがあり,脳外傷・脳腫瘍によるものや脳炎後パーキンソニズムも含めて,二次性パーキンソニズムとして一括されている.
一方,老年期に発病したパーキンソニズムにおいては,脳動脈硬化の合併頻度が高くなり,振戦麻痺以外に動脈硬化性パーキンソニズムの存在が,Critchley(1929)以来指摘されてきた1,2).しかるに近年,振戦麻痺の主病変が黒質の変性を中心としたdopamine作動性神経系の異常であることが一般に認められるようになると,「動脈硬化症によるパーキンソニズムという疾患はない」とする者が多くなってきた3).しかしながら日常臨床においては老年者のパーキンソニズムのなかに脳血管障害もしくは脳動脈硬化と関連があると思われる例がしばしば経験されるため,我々は以前に老年者のパーキンソニズム患者34剖検例について検討を加えたことがある.その結果,黒質の変性が軽度であり,脳動脈硬化が強く,両側被殻を中心に梗塞性病変を有する症例が16例と約半数を占めていた4).本稿では,パーキンソニズムの一般的事項とともに脳血管障害によるパーキンソン症候群について述べる.
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