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1.はじめに
我が国のROM測定は,つい最近まで主として1948年に日本整形外科学会の制定した手法に従って行われていた.しかし欧米諸国でのROM測定の開始肢位が解剖学的肢位を基本肢位とする,いわゆるzero-starting methodを採用しているのに対して,我が国の方法はそれと異なっていたために種々の混乱があった.これに加え各病院やリハビリテーション施設では各自がそれぞれ好ましいと思う方法を用いたり,PT・OT養成校でも統一されたROMテストが学生に教育されていなかったため,この混乱にますます拍車をかける格好となっていたように思われる.このため1971年頃よりROMテストの基本をzero-starting positionにすることの検討がなされ始め,1973年日本リハビリテーション医学会評価基準委員会と日本整形外科学会身体障害委員会の合同委員会でAmerican Academy of Orthopedic Surgeons(以下A.A.O.S.と略す)の方式3)を骨子とする原案が作られ,リハビリテーション医学10巻および日本整形外科学会誌49巻に掲載され,翌年の1974年6月最終案が日本リハビリテーション医学会総会において承認されるに至った1)(図1).この時点で我が国のROMテストは一応の統一基準化がなされたものと考えられるが,現時点に至る5年の間に幾多の問題点が多くのリハビリテーション関係者によって指摘されてきたのも事実である.例えば日本リハビリテーション医学会評価基準委員会と日本整形外科学会身体障害委員会は,日整会誌53巻4月号2)に“関節可動域表示に関する疑義解釈について”という表題で,会員から疑問に対しての解説を発表している.しかしこの解説の中には実際の測定に関する問題点やその解釈は具体的に述べられていない.またここで反省すべきことは,実際臨床の場で一番ROMテストと係わり合いのある理学療法士,作業療法士(以下PT,OTと略す)からまとまった問題提起が今までなされえなかったことである.以上の点を踏まえ,本稿ではROMテストのうち特に問題が多いと考えられる肩に焦点を絞り,PTならびに医師から寄せられたアンケート調査の結果を基に,リハビリテーション医学会法(以下学会法という)のROMテストの問題点について若干の検討を加えてみた.
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