今月の主題 大腸sm癌
主題症例をみて
アンケート集計報告とその考察
武藤 徹一郎
1
T. Muto
1
1東京大学医学部第1外科
pp.851-855
発行日 1983年8月25日
Published Date 1983/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109439
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大腸sm癌の主題症例を選び出すに当たって,A群からは転移が起きてもよさそうなのに再発が起こらなかった例および予想どおり再発が起こった例を,B群からは転移陽性例,局所遺残例を,C群からは転移陽性例を中心に選出するように心掛けた.アンケート用紙の記載のみに頼った選別であったので,どのような症例が出てくるか多少心配であったが,提出された症例をみるとほぼ目的にかなった例が出揃ったと思われる.症例の写真,組織像を眺めれば,どのような形態,大きさ,浸潤度のものに転移が起こっているかの実態が理解できよう.症例の選出に当たってこれらの点には全く留意していないので,無茎性で大きな,massive invasionのあるsm癌に転移が多いという特徴は決して人為的なものではないと考えられる.一方,これはと思うような症例で転移が認められなかったり,こんな病変でと思われる例に明瞭な転移が認められることが,これらの症例からも明らかにうかがえる.例外はあるにせよ,広基性でsmへの癌浸潤がmassiveに認められるsm癌は,やはりポリペクトミーのみでは不十分であることは確実なようであり,2cm以下の有茎性でsmへの浸潤が軽度な場合には,転移の危険がほとんどないと考えておいてもよいと思われる.
症例をみて気になることは,注腸造影,内視鏡検査による形態の記載と,組織標本上の形態が違う例が少なくないことである.標本上は明らかに広基性であるのに内視鏡的には亜有茎と判定されていたりするのは,どちらを採用すべきであろうか.sm癌の形態と転移の危険性とは無関係ではないようであるので,一度よく検討してみる必要があるように思う.
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