特別寄稿
ボリビアのお産に関する一考察—外来でのアンケート調査から
清水 利恭
1
,
仲里 京美
1
,
比嘉 喜美子
1
,
Odalis Nogales Rojas
1
1コロニア・オキナワ診療所
pp.884-890
発行日 1994年11月25日
Published Date 1994/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901134
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はじめに
すべての発展途上国において,医療衛生上の最も大きな問題の1つは,母子保護・母子衛生である。1991年発表の国連統計1)によれば,熱帯圏南アメリカの女性1人当たりの子供の数は3.5人で,そのうちボリビアは4.9人と最多である。最近のラジオニュースによれば,ボリビア人女性の70%が未だ自宅分娩であり,うち10%のみがPartera(無資格の助産婦)による出産で,90%近くは家族の誰かによる介助であるという。したがって,新生児破傷風などによる周産期死亡も多く,多産多死の状態が続いている。
さて,垂直位分娩の世界的権威であるウルグアイのカルディロ・バルシア博士によれば,世界中の伝統的分娩スタイルは垂直位であり,「ラテン・アメリカの国では,特にインディアンの人たちには,分娩第1〜2期ともに起立位だけが用いられていた」2)とのことである。そして,垂直位分娩こそ生理に適した出産であり,「垂直位分娩で生まれた新生児のほうが,水平位の母親から生まれた児より状態が良」く2),仰臥位は生理学的には不適であり,「産婦および胎児にとって何のメリットもない体位」2)とのことである。しかしながら,まだ先進国においても,“医師にとって管理しやすい”という理由から,分娩スタイルの主流は仰臥位が占めている。
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