- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
作業療法の問題点は,効果を単純に明確に表明していない点にある.多くの方と接していて,理学療法は分かるが作業療法は良く分からないとの意見を聞く.最近,ある行政マンから同じような質問を受けた.
人は「作業」なしでは生活を維持することも,また向上させることもできないと思っている.多くの患者と出会い,幸いにも27年間もお付き合いをさせて頂いている方や,半年で再発作のためお別れした方等々,いろいろな方々と接する中で,「作業をしている人」は健康であるとつくづく感じている.写真は退院後,様々な「作業」により「健康」な生活をおくっている人である.これはほんの一部で,寝たきりの方も多くいるが,その人が望む,人それぞれの人生に合わせた「生活」を提案し,それが実現できるよう作業療法で支援する,すばらしい仕事だと感じている.
作業療法が「分からない」といわれたら,上記の事例を引き合いに出して具体的にどのように作業療法で関わったかを説明する.簡単に分かりやすく,そこに少しだけ医学的な要素を入れながら,将来的な見通しや継続的な関わりの必要性を合わせて話をすると,だいたい人は,「作業療法は役に立つのですね」といってくれる.そして,「実際の生活に沿った支援」であることを理解してくれる.
作業療法教育についても同じような要素が必要と思う.作業療法士の養成教育において,何を教授し,どのような作業療法士をつくるのかの共通目標を持つことは,学内—臨床教育を通じて最低限必要なことであると考える.
以下,このような臨床的な体験を基に,作業療法士の養成教育の現状と問題点について,主に臨床実習指導者としての立場から,最近の学生の傾向,ICFの概念導入の影響等について述べる.なお,回復期リハビリテーションの役割を持つ施設での臨床実習を通しての経験をもとにしており,他の病期,領域での実態とかけ離れている可能性があることを,あらかじめご了承願いたい.
Copyright © 2005, Japanese Association of Occupational Therapists. All rights reserved.