The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 13, Issue 10
(October 1979)
Japanese
English
講座
失行症・失認症Ⅶ ゲルストマン症状群,優位頭頂葉(後部)症状および構成失行
Apraxia and Agnosia Ⅶ,“Gerstmann Syndrome”, Dominant Parietal Symptoms and Constructional Apraxia
鎌倉 矩子
1
Noriko KAMAKURA
1
1東京都老人総合研究所障害研究室
1Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology.
pp.719-725
発行日 1979年10月15日
Published Date 1979/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102019
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はじめに
前々号の視覚失認,前号の一側性無視につづいて今号でとりあげる第3の症状群は,前の2つに較べれば,一見多種類の症状から成り立っている.既出の初回評価19)の項目にてらして述べてみると,それはおよそ次のようなものである.
すなわち,桁数の多い数字を読む際の位取りの困難,視覚的記憶像の想起の困難,位置関係の認知に関する種種の課題(視覚的イメージの操作・位置関係語の理解,位置関係図の理解や想起など)の障害,描画困難,書字困難,手指呼称の誤り,左右など身体関係用語の理解や使用の誤り,計算と計量の困難などがそれである.もちろん,ひとりの患者がこの全てをそなえているとは限らない.またこれ以外の症状が伴うこともある.文字の読みの障害,「広がり」の認知の軽い障害,一般的な構成課題の障害,身体構成障害などがこのあとの場合にあてはまるものである.
こういう一見ばらばらな症状が1つの意味あるまとまりを持っているらしいと最初に気付いたのはGerstmannであった.もっとも彼が固有の意味を与えたのは,手指失認,左右判断の障害,失書,失算の4つについてである.今日ではこの4症状だけに固有の意味をみとめることは少ない.しかし,彼の着眼はその後の人々に大きな影響を与えたということができる.
この小文では,はじめにあげた種々の症状の同時出現にどんな解釈が可能かを考え,また現時点で考えられる範囲で,その対策についても触れることにする.
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