症候群・徴候・38
Gerstmann (ゲルストマン)症候群
平山 恵造
1
1順大脳神経内科
pp.590
発行日 1975年6月1日
Published Date 1975/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203719
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Gerstmann,J.(オーストリア)は1924年に,今日Gerstmann症候群と呼ばれている次の4症状の合併を呈した1例の患者を報告した。即ち,①手指失認Fingeragnosie (自分の指,ならびに他人の指の認知障害で,命ぜられた指を提示したり,検者が触れた指を呼称したり,検者の出した指を呼称したり,あるいは検者の指の真似をすることができない)。②左右障害Rechts-Links-stö—rung (自己および検者の身体部分の左右を判別し難く,左右を間違える)。③失算Acalculie (数字はわかるが,計算が障害され,特に筆算を間違える)。④失跡Agraphie (失読や失語を伴わない書字の障害で,自発書字,書取りがおかされる)である。
Gerstmannはさらに症例を重ね(1927,1930),この一連の症状の原因が左頭頂葉−後頭葉移行部にあるとした。本症候群を持つ症例の最初の剖検報告はHerrmann und Pötzl(1926)によるもので,この例では右側の頭頂葉—後頭葉に腫瘍があつたが,この例は両手利きであつたことが注目されよう。その後の多くの報告で,今日,本症候群の発現するのは,劣位半球病変によることもあるが,優位半球障害における方が明らかに多いとされている。
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