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講座
失行症・失認症Ⅵ 一側性無視の特性と対策
Apraxia and Agnosia Ⅵ. Unilateral Inattention and Its Treatment
鎌倉 矩子
1
Noriko KAMAKURA
1
1東京都老人総合研究所障害研究室
1Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology.
pp.621-628
発行日 1979年9月15日
Published Date 1979/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101989
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Ⅰ.一側性無視の症状
1.初回評価の成績
前々号31)に述べた初回評価を実施すると,患者はいくつかの群にわかれる.前号でとりあげた視覚失認の患者(群)は,視覚的課題の中でも,単一対象の意味的把握に主な障害を示す群であった.
今号でとりあげる第2群は,視空間,触空間,身体空間の認知に特徴ある欠陥を示す一群である.患者は左方の,あるいは右方の視覚刺激を「見落と」す(感受しないのか認知しないのかは議論のあるところ).検査項目に開していえば,視空間の「広がり」の認知に関する項,すなわち,図の彩色や2桁以上の数字を読むこと,指定の記号を数えたり○で囲んだりすることに重大な欠陥を示す(例,図1).このような傾向はすでに,単一対象の意味的把握の項で,線画(とくに妨害刺激のあるばあい)や記号(とくに半分だけでも意味を持ちうる漢字や数字)の部分にしか反応しないことから露見することもある.状況図の理解,位置関係認知,構成的課題(種々の組みたてや描画など)の不良も同時に見い出されるが,その誤りかたをみると,空間の一側性無視から二次的に招来されたと見なせるばあいが少なくない.身体関係認知の課題では,両半身のイメージの統合の項で欠陥が見い出されることがある.半身に対する無使用や無関心,片麻痺の否認がそれである.動作課題では,模倣的身体構成のほか,複合動作(物体を扱う動作,物体と身体空間を同時に扱う動作)において,一側性無視の特徴をそなえた二次的な障害が見い出されることが多い.筆算,時計の読み,計器の使用についても同様である.
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