特集 精神神経症と理学療法・作業療法
精神神経症の症例
脳卒中後に不安神経症を呈した一症例
金子 翼
1
1国立犀潟療養所附属リハビリテーション学院
pp.466-468
発行日 1979年7月15日
Published Date 1979/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101942
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1.はじめに
脳卒中後遺症患者の神経症(傾向)に関する研究は,主として心身医学の領域で報告されている.
たとえば,松尾ら1)は,CMI field IV,つまりdiagnosed to be neuroticのcategoryに含まれる脳卒中後遺症患者の比率は,健康人のそれに比較し著しく高く,また50歳以下で,発病後6カ月以上経過した者に,その傾向が強い事を指摘し,黒田ら2,3)は,利き手であった右片麻庫,しかも男性にそれが多く,精神症状として不安・抑うつなどが多い事を報告している.
本症例の場合も,これらの指摘にあると同様に,50歳以下・発病後6カ月以上・右片麻痺・男性,である.
そして,本症例の場合は,後述するごとく,片麻痺の状態は,ほとんど健常者に近い程度に極めて軽いものであり,身体機能的には充分就労可能な能力を持ちながら,不安発作ゆえ就労不可能のまま約3年を経過したcaseである.
作業療法開始後約6カ月,計39回の通所によって,この不安発作は消失し,さらに身体能力も向上した上でRehabilitate可能となり,その後4年間のfollow upでも順調な社会適応状況にあることを確認できた.
そこで,この稿では,この種の疾患に対するapproachに関する問題を考える材料として,本症例の経過を報告する.
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