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特集 理学療法・作業療法の学問的体系をどうするか
精神科作業療法の学問的体系化を考える―二つの事例を通しての思索
Thoughts on Scientific Systematization of Psychiatric Occupational Therapy
冨岡 詔子
1
Noriko TOMIOKA
1
1山梨日下部病院
1Yamanashi-Kusakabe Hospital.
pp.21-27
発行日 1979年1月15日
Published Date 1979/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101829
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Ⅰ.はじめに
とにかく大変なテーマを与えられたものである.頭の中ではいろいろ考えをめぐらしても,書くという現実的な行動にはなかなか移れない.考えることと書くことの間には格段の差があるものだと改めて実感された.精神科では目にみえる行動や,言葉を利用して精神内界での動きを理解しようとするのだが,行動の背後にある考えや情緒がその人自身にとっても暖昧であれば,言葉を通して表現することがいかに困難かという現象とも共通したジレンマなのかもしれない.精神科のOTのみならず,どの領域でもOTでみられる現象は“片手動作の訓練をしている”,“玩具を使って遊んでいる”,“編み物をしている”という“何らかの活動をさせている”という具体的行為としては,一目みればよく分る.しかし,その行為の背景にある“何のために,なぜ,何をどうしようとするのか”というOTでみられる現象の背景にある考え方まで理解することはできない.その考え方および考えている内容を言葉で表現していくことが,理論化とか学問的体系化のそもそもの出発点ではないかと考えている.作業療法は障害の何たるかを問わず,活動を媒介にした働らきかけをする実践活動がまず存在した.それは経験的な人間の智恵,直観,あるいは価値や信念に某づく実践活動であったかも知れないが,試行錯誤の実践からひとつの考えが導き出され,それがまた実践のあり方を変えていくといったように,すること(実践)と考えること(理論化)の連続的なからみあいの中で,今日の作業療法が存在していると思われる.
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