とびら
二つの力
金子 光
pp.1
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911519
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今年,日本中に猛威を振つて幼ない生命をおびやかした「ポリオ」も,ようやく秋風と共にしずまり,世の親の思いをホツとさせるようになりました。「ポリオ」は何も急に今年日本をおそつて来たものではなく,従来も部分的に起つていたのですが,比較的数も少なく大流行を起すことがなかつたようですから,皆の意識にものぼらずあたかも最近の新らしい病気のような錯覚をもつていたことが多いようです。従来ポツポツあつたケースについては親はあきらめと恥とからなるべく世間の眼からかくし,周囲も医療関係者すら深い関心はよせていなかつたためでありましようが,後遺症のある少年少女や立派に成人した大人にも時に見うけられるのをみてもわかります。
この話は山口県のある離島の話で,中学1年の1人の少年が,再起不能として絶望視されていたものを,二つの力が再生の光を与えた感動深いものです。
少年の家は母子家庭で,生活保護こそうけてはいませんけれどこの病児に充分な特殊治療を加える余力はなく,ただ対症療法を行なう程度で,後遺症をもつ体は,1日1日と母子のねがいとは逆の方向に進むばかりでした。
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