書評
石田肇編―「痛み」―リハビリテーションにおけるアプローチ
大川 嗣雄
1
1横浜市立大学リハビリテーション科
pp.1063
発行日 1978年12月15日
Published Date 1978/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101797
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痛みはリハビリテーション医学において重要な問題の一つである.というより,医学全体における重要な課題と言った方が良いのかもしれない.従って,痛みをコントロールし,和げるために,多くの方法が考えられ,用いられてきた.しかし,その中でもリハビリテーション医学の母体とも言うべき物理医学(Physical Medicine)で用いられてきた種々の手段は,痛みを和げる目的のものも多かった.そこで,物理医学から発展してきたと考えられるリハビリテーション医学が痛みのコントロールに対して,相当な役割を期待されている事は当然の帰結であろう.さらに,物理医学が母体とは言っても,新しいリハビリテーション医学という立場からは,より積極的な治療すなわち,全人格的なアプローチがその基本的な姿勢であり,この考え方は古典的な物理療法より痛みに対してもより有効な手段になるはずである.これらの点は本書の冒頭にリハビリテーションにおける痛みの問題として佐々木によって簡潔ではあるが的確な指摘がなされている.このように考えてくると,日常の診療において,リハビリテーション医学の立場から痛みに対して適切な治療を行っているかどうかについては甚だ心許ないと感じるのは筆者だけであろうか.そのような点からみると,この本はリハビリテーション医学の立場から,痛みの基礎から実際の臨床に至るまで,心を配って編まれたものだと考えられ,編者の御努力を先ず多としたい.
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