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はじめに
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は,1世紀前にJ.M. Charcot1)によりはじめて報告された運動ニューロン系を侵す原因不明の変性疾患で上肢及び下位ニューロン症候を,ともに呈し,徐々に進んで致命的経過をたどる2,3,4).1973年に厚生省特定疾患ALS班が,1974年に文部省特定研究「難病」ALS班が発足し,本症の成因,予防,治療,発症機構の研究がなされ,平山ら4)によって研究の現況が発表されているが,病因や根本的な治療法は,未だみつけられていない.患者は初発部位に異いがあるが,1.全身の筋萎縮と運動障害,2.構音障害,嚥下障害,3.病的反射出現,深部反射亢進等の障害を来たし,比較的はやく末期に至る.末期には,四肢,体幹などを自らの意志で動かすことが困難になる.しかし知能および感情などの大脳皮質機能の大部分は,死に至るまで侵されないという悲惨な状況下で日々の生活を送ることになる.発症後の生存期間4)の多くは1~3年である.少数例で10年以上生存する例がある.また発病年齢が高いと進行が早いという報告もある5).
1.ALSのリハビリテーションの目標は残存機能を有効に使って日常生活をつづけさせ,残りの人生を,人間的尊厳を保ち有意義に過せる様に指導ならびに援助する.家族に対しては各種の負担を少くすることにある.そのため a.筋萎縮の進行を遅らせる.b.合併症を防ぎ健康管理をする.c.日常生活動作の工夫を行い介助方法を家族に教える.d.生活環境の調整 e.コミュニケーション手段の確保 f.患者と家族に対する心理的支持.などである.
2.初期の対策4)は,医師による生活指導が主になる.内容は職業勤務の指導,運動練習,喫煙,飲酒,性生活,入浴,栄養,病気説明等である.
3.進行期になると日常生活で介助がいるようになり,リハビリテーションに来るケースが多い.ここではこの時期の作業療法を主として扱う.末期の呼吸麻痺患者の経験がないので触れなかった.
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