Japanese
English
特集 難病
紅斑性狼瘡
Lumpus erythematosus
本間 光夫
1
MitSuo HOMMA
1
1慶応義塾大学内科
pp.687-690
発行日 1976年9月15日
Published Date 1976/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101300
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Ⅰ.はじめに
紅斑性狼瘡(LE)の狼という言葉は,ラテン語でlupusという.この言葉は
顔の紅斑性潰瘍を指す.皮膚に食いこみ,かみちぎり,破壊する病気という意味である.
最近日本語では全身性エリテマトーデスと呼ばれているが,systemic lupus erythematosusの訳語で,それぞれの頭文字をとってSLEとも呼ばれる.
SLEは次のような特徴を持っている.
(1)全身性炎症疾患で自己永続性つまり慢性の経過をたどる病気である.しかしこの炎症は感染によるものでもなければ,悪性腫瘍によるものでもない,おそらくルプス素因という特別遺伝的に決定づけられたものが,その発症に必要であると思われる.つまり特別な素因を持っていない人には発症しないと考えられる.
(2)臨床的には多臓器障害性の症状を示す.すなわち,心臓,肺,腎臓,皮膚,関節,脳など多くの臓器が同時にあるいは次々と侵される.経過はときどき急性発作を間にはさみながら長期間続くが,何年間にもわたる緩解期つまり全く無症状の時期のみられることも少なくない.これまで考えられていたような一律に致命的な疾患ではない.
(3)多くの自己免疫現象とくに抗核抗体がみられる.すなわち自分の身体を構成している組織,細胞などの成分に対して抗体をつくってしまう.
(4)病理組織学的にフィブリノイド壊死を伴う血管障害が特徴で,ときにヘマトキシリン体が証明される.このような変化は自己抗体が身体のなかにつくられる結果と考えられている.
(5)男性より女性の方が5~10倍と多い.とくに20~40歳の出産可能女性に多い.
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