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Down症候群について
井上 英二
1
1東京大学医学部脳研究所
pp.295
発行日 1968年4月25日
Published Date 1968/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904507
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ここに菅野重道氏によつて飜訳されたLejeune,Gautier,Turpinの1959年の論文は,現在Down症候群とよばれている精神薄弱の一型をもつ個体は,21番目の常染色体が正常より1個多い体細胞をもつ個体であることをはじめて報告し,21-トリソミーという疾患単位を確立した論文である。
Down症候群,あるいは以前には蒙古症などと呼ばれていた臨床類型は,1866年Langdon Downによつて,はじめてMongolian type of idiocyという名を与えられた。その特異な形態的特徴のために学者や臨床家の注目を浴びたが,その病因は1世紀近くもの間まつたく不明であつた。家族内に反覆して現われる危険率は非常に低いこと,にもかかわらず1卵性のふたごではほとんど全例一致していることなどから,胎生初期の発達障害が疑われ,Warkany(1960)によると,1959年のこの論文の発表以前に,病因に関する学説が40近くあつたという。その中,オランダの眼科医Waardenburg(1932)がはじめて染色体異常の存在を疑つたというが,彼の学説が後に再評価されるようになつたことはいうまでもない。
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