メディカルプログレス
生命科学の研究について/自閉症(1)―知覚・認知の障害
石川 友衛
1,2
,
佐々木 正美
3
1日大医学部生理学教室
2国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院生理学
3東京大学病院精神神経科
pp.65
発行日 1976年1月15日
Published Date 1976/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101154
- 有料閲覧
- 文献概要
生命体の機能を研究する生理学でもまた医学でも,機能の把握のしかたは研究者の自由であるから,構造を把握しようとして切断した種々の断面にあらわれる多様性と同様に,機能のとらえ方によって多種多様の機能の断面を生じ,その結果,機能の特徴の選択に混乱がおこる.
生体は病気であってもまた病的でない状態であっても,現在まで進行してきた時間経過上の1点にあって,さらに今まで維持してきた状態に近似の状態になるような調節機構が働いていて,少しずつ以前の状態とは変化しつつ進行してゆくものと考えねばならない.このような考えはすでにキャノンが生物の本質として恒常性維持作用Homeostasisを述べた時にも認められており,ウィナーがサイバネテックスを創設した時にも認めている.学問の普及と共に恒常性維持作用や,生体制御機構の説明のなかには,これらの変化部分を極少として無視していると考えられる傾向もある.勿論一断面のとらえ方としては充分なこともあろうが,それは生体機構の全体でないことに注意すべきである.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.