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はじめに
近年老人人口の増加にともない老人に対する感心が著しく高まり,また人口の老齢化による成人病の増加とあいまって,リハビリテーションの分野においてもその傾向がみとめられる.そして理学療法もリハビリテーションサービスの一環としてその必要性が強く指摘されていることは言うまでもない.
さて居宅寝たきり老人は全国で40万人をこえると言われており,東京都内においても1万1千人から1万2千人(昭和43年全国社会福祉協議会「居宅寝たきり老人の実態調査」より)と言われ現在はそれ以上にのぼるものと考えられる.一方そのような老人を収容している特別養護老人ホーム(以下特養と記す)は都内21施設,1774名の定員(昭和46年度社会福祉施設調査より)で,その後は増加の一途をたどっている.このような現況において,特養での理学療法の必要性も強い.ある意味では人生の終着駅と言われている特養に入所している老人に対して,理学療法士が如何に対応していかねばならないか,また特養という福祉施設との対応も同時に考察し,理学療法士の役割について述べる.
Ruskは老人のリハビリテーションの中で,「身体障害を持つ老人にとって一般に歩行,洗面,食事,着衣および排泄の動作の自立が第一の目標である.その患者がこの領域では最高の機能に達し,かつ彼にとって可能なかぎりの最良の心理的適応を達したとき,十分に回復したといってよいだろう」と述べている.このことを,心身一体の機能の十分なる発揮としてとらえるならば,理学療法が単に身体機能面のみに終始しえるものではなく,また機能の回復が十分なる心理的適応を必然的にもたらすものでないことを考えてみる必要がある.特に入所老人の身体症状はほとんど固定しており,単なる症状の回復,維持のみでは徒労であろう.しかし機能の回復,維持の理学療法の必要性を否定するものでは決してなく,心身一体としての老人の把握のもとに理学療法が実施されるべきであると考える.
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