特集 老人の福祉と保健
特別養護老人ホームの老人
前田 甲子郎
1
1名古屋市厚生院
pp.173-177
発行日 1972年3月15日
Published Date 1972/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204440
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日本人の平均寿命の延長もここ2,3年は足踏み状態となり,一方,老人医療費の無料化運動は急速に全国に拡がり,47年には国の施策としてとりあげられるに至った.一方,いわゆる「ねたきり老人」という語句で代表される在宅長期臥床老人は実態調査から40万余といわれ,しかもその対策の立遅れを指摘するかのごとく,中風老人の焼死,孤独な老人の死後約1カ月発見などが時々新聞紙上の話題となっている.この対策として,国は老人福祉法に特別養護老人ホーム(以下単に特養と記す)をとりあげ,多くの問題を含みながらも急速な発展をなし,すでに全国1万余の収容人員迄に整備されるに至った.しかしながら一方,最低基準に協力病院の協力と,医務室,訓練室の設置が義務づけられながらも,いわゆる老人病院の未発達,健康保険制度の矛盾,看護の困難性も加わり,医療陣の消極的な参加などから,その実態は老衰末期の世話ホームで,一種の姥捨山にすぎないという批判すら聞かれるに至った.この特養の諸問題の医学的な観察を,名古屋市厚生院を中心に行なったので報告する.
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