The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 8, Issue 12
(December 1974)
Japanese
English
精神科作業療法の展開
個人的作業療法のあり方について(Ⅲ)―失敗した一症例からの考察
On Individual Occupational Therapy: Some Consideration through a Case Report (Ⅲ)
平野 寛子
1
Hiroko HIRANO
1
1国立肥前療養所
pp.755-758
発行日 1974年12月15日
Published Date 1974/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100939
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Ⅵ.考察
前回に記述した経過を振り返りながら,考えてみることにしたい.
1.患者の特徴ある動き
この患者に特徴的な動きが,いくつか観察された.
まず第1に,患者にとっての作業の意味の変化が挙げられる.即ち,患者は,初めから作業へ熱中していたが,治療中期にみられた陶芸への熱中は,それまでの熱中とは違った意味があったと考えられる.この変化の意味を,家族歴や生育史から推察してみた.父親が,陶芸の趣味を持っていたことを,患者は,繰り返し述べ,自分自身も,陶芸に異常なまでに熱中した.このことに,父親から捨てられたうらみや,父親と結びつきたい願望,さらに対抗意識などといった屈折した感情が含まれているように思う.祖父の権力の強さ,父親の家出,その後の患者と母親との強い結びつきなどの家族関係は,患者に強く影響を与えていたと考えられる.
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