特集 脳卒中のリハビリテーション
Ⅳ 理学療法
片麻痺における関節可動域訓練―特に注意すべき点について
伊藤 直栄
1
1浴風会病院リハビリテーション室
pp.469-472
発行日 1971年11月9日
Published Date 1971/11/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100505
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はじめに
これまで本題に関する教科書的なものは,いくつか見られるが,いずれも解剖学的見地から述べられているのみで,中枢神経系障害を伴っている場合の特殊性を,どの程度考慮されているのか明確でない.また,実際に関節を動かす場合,動かす方向は明確に示されているが,注意点が不明瞭のように思われる.
今回は脳卒中の特集ということであるから中枢神経系障害を伴っている場合の筋の状態を加味して,関節可動域訓練(以下訓練と書く)を行なう具体例を示し,更に,関節可動域訓練の際に訴える痛みに少しでもこたえる意味で,経験的知見を述べたい.
上肢でも,下肢でもいえることであるが,単なる他動的関節可動域訓練はむだである.むろん,全く弛緩状態の場合は論外であり,弛緩状態にあるなら,毎日一定の訓練を行なっていれば,特に問題はない.しかし,痙性が出現してくると,各関節を取り巻く筋の間にバランスのくずれが見られる.ここで関節可動域訓練もスムーズに遂行できなくなる.
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