展望
結核の作業療法
若井 光子
1
1国立療養所東京病院
pp.101-106
発行日 1971年4月9日
Published Date 1971/4/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100410
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はじめに
結核症は文明のはじまりのころから存在し,私たちを悩ましてきた.
結核の治療について語るとき,私たちは一般に‘闘病’とか‘療養’ということばを使う.このことばの意味が示すとおりに,治そうとする強い意志をもって積極的に治療し養生しないと治らない病気なのである.今も昔も結核を治すためには,長い間社会から離れたところで孤独を味わいながら,結核と対峙してたたかわなければならない.
今日では療養生活のきびしさも薄れてきている傾向にある.結核の治療上,安静が必要であるにもかかわらず,考え方の傾向として,できるだけ寝かしつけないということがいわれるようになった.外来治療をすることにより,勤務を続けたままでよいとされ,実施されている.
最近,結核は減っているという宣伝が徹底してきているあまりに,結核症は伝染病であり,再発のおそれがあり,薬のきかない結核もあるという一面を忘れられてしまい,軽視されているというあぶない状態にあると思われる.抗結核薬があるために,その投与法を誤ってこじらせてしまった結核は跡を絶たない.
病院には肺の機能の著しく悪い患者が数年間滞在し,社会へもどるめどのたたないまま,だんだんと年をとっていく事実がある.結核の治療ということには,菌の排出を止めることだけでなく,後遺症に関しても予防と治療をしなくてはならない.
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