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中耳換気と中耳真珠腫
Middle Ear Ventilation and Cholesteatoma
髙橋 晴雄
1
Haruo Takahashi
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御学講座耳鼻咽喉病態制御学
pp.262-271
発行日 2003年4月20日
Published Date 2003/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101000
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I.はじめに
中耳真珠腫の病因については数多くの研究が現在までなされてきたが,まだ完全に解決されているとはいえない。例えば,その多くは小児滲出性中耳炎の後遺症であり,滲出性中耳炎と同様に耳管機能障害がその病因に関係するといわれているが,あるものは滲出性中耳炎にとどまり,あるものは中耳真珠腫に移行する事実は耳管機能障害だけでは説明できない。さらに,中耳真珠腫の耳管機能が正常であることもしばしば経験するところである。
一方,中耳真珠腫の乳突蜂巣発育は一般に抑制されているといわれているが,他の中耳炎でもそれはみられることであり,何か真珠腫では特有の付加的な病態があるのかなどの疑問もある。さらに成因として,鼓室狭部のブロックがまず起こり,その結果乳突腔に陰圧が生じて上鼓室が乳突腔側へ陥凹するともいわれているが,本当に鼓室狭部のブロックが一次的な病因なのであろうかなど疑問は尽きない。
本稿では,まず正常耳の中耳換気,中耳真珠腫での換気病態について解説し,次いでその換気病態の難治性滲出性中耳炎との比較や,保存治療が有効な中耳真珠腫の病態などを主に中耳換気の面から分析することにより,中耳真珠腫の成因,成立過程を探ってみたい。
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