特集 頸部腫脹の臨床
II.診断・治療
唾液腺腫脹
炎症性腫脹
小池 吉郎
1
Yoshio Koike
1
1山形大学医学部耳鼻咽喉科
pp.793-797
発行日 1983年10月20日
Published Date 1983/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209674
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I.はじめに
頸部腫脹をきたして耳鼻咽喉科を訪れる疾患は,炎症,リンパ系疾患,腫瘍,甲状腺疾患,その他に分類されよう。本稿では,それらのうち,炎症性腫脹をきたす,唾石症を除く唾液腺疾患について述べる。
炎症性腫脹をきたす唾液腺はほとんど,耳下腺か顎下腺である。炎症の原因は,耳下腺では感染,顎下腺では唾石が多い。唾液腺疾患は一般に特有な症状を現すことが少なく,腺外のリンパ節もあり,腫瘍との鑑別も容易ではない。診察にあたっては,唾液腺腫脹を見出した時はその病歴をよく聴取し,触診によって腫脹の性状をよく把握することが大切であり,頸部の解剖を手十分認識する必要がある。特にリンパ節腫脹があれば悪性腫瘍を常に念頭におき,原発巣の検索を心がけるべきである。また,特異な疾患も稀にあるので,血液,血沈,血清学的検査,胸部X線写真などもできる限り施行するべきであろう。
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